知恵の経営

第29回

利益追求の末に日本一

アタックスグループ(税理士法人、経営コンサルティング)  執筆

 

 人を大切にする経営学会が主催する「第3回人を大切にする企業現地研究会」が6月24日に行われ、岐阜県の未来工業とLFC(本巣市)の2社を訪問した。いずれも「日本でいちばん大切にしたい会社」大賞で、未来工業は第1回経済産業大臣賞、LFCは第4回実行委員長賞を受賞した企業だ。

 特に未来工業に興味があった。カリスマ経営者だった山田昭男氏が2014年に亡くなり、新社長となった長男、雅裕氏のもとでの経営を知りたかった。目を閉じて雅裕氏の話を聞けば、昭男氏の話かと錯覚するほどブレがなかった。

 「日本一幸せな会社」「ホワイト企業の代表的企業」などと紹介されることが多い。年間の休日数140日や残業禁止といった社員に優しい社内制度がいくつも用意されている。ただ、今回残業に関して、雅裕氏にこんな話を聞くことができた。

 「多くの方は、未来工業は残業を禁止している、残業がゼロだ、というが、実際の言葉は、(初代の)昭男氏がこのことを言い始めた当初から、『残業ゼロ・残業禁止』と体言止めになっている。つまり、残業ゼロはあくまで目標でしかない」

 例えば、現在は太陽光発電関連部材の製造が忙しく、残業ゼロとはいえない状況が続いている。残業が必要となることも往々にしてある。当然、顧客あっての仕事であり、受注にきちんと応える態勢はつくっている。残業禁止だから、明日まで待ってくださいなどとは決して言わない。ただ、残業そのものが利益を削るという認識は常に持っている。

 「仮に同じ商品が2つ並んでいて、1つは100円、もう一方は残業代が乗っているから125円ですといわれても、お客さまは、それじゃかわいそうだから125円の方を買おうとはならない。お客さまにとって残業代は関係ない話。そこで同じ100円で売れば、今度は会社の利益を削ることになる。つまり、残業は会社にとってマイナスが大きいから否定しているだけ。言葉が独り歩きしているが、根底にあるのはそういった考えだ」

 残業は会社の利益を圧迫する。だから経営者は会社に利益を残すため、いかに残業をさせないかを常に考えなければいけない。

 初めから日本一幸せな会社を目指したわけではなく、利益追求を考え抜いた末に行きついたのが、残業をしない、日本一幸せな会社だったのである。

<執筆>
アタックス研究員 坂本洋介

2015年7月22日「フジサンケイビジネスアイ」掲載

 

プロフィール

アタックスグループ

顧客企業1700社、スタッフ170人の会計事務所兼総合コンサルティング会社。「社長の最良の相談相手」をモットーに、東京、名古屋、大阪、静岡でサービスを展開している。


Webサイト:アタックスグループ

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