知恵の経営

第227回

企業の目的は顧客の創造

アタックスグループ(税理士法人、経営コンサルティング)  執筆

 
現在は大変化の時代であり、グローバル化の進展、AI(人工知能)革命、少子高齢化、循環型社会の実現といった基本的な潮流の中で企業は変革を迫られている。現在は変化が常態化しているといっても良い。

ピーター・ドラッカーは「企業の目的は顧客の創造」といった。絶えず変化する経営環境の中で企業は顧客を創造し続けなければ存続することができない。経営者が一番考えなければならないのは長期的視点に立った事業のあり方と顧客の創造である。ドラッカーは企業が顧客を創造するためにはマーケティングとイノベーションという2つの活動が必要であるといった。

マーケティングは顧客が求めるものは何かを探る活動であり、人口構造、人々の価値観、ライフスタイルの変化などを考えて、顕在化された課題、潜在している課題つまりニーズとシーズを探し、その解決策を提案する活動である。筆者はこのことを分かりやすく不便・不満といった「不」を探すことがマーケティング活動の本質であると考えている。

他方、イノベーションはより良くより経済的に商品・サービスを提供する活動である。ヨーゼフ・シュンペーターはイノベーションの本質は新結合であり、新しい商品の導入、新しい技術・生産方法の導入、新しい市場の開拓、新しい原料の導入、新しい経営組織の実現などは全てイノベーションであると言った。

筆者は毎年東証マザーズなどへ上場した若手起業家と共同セミナーを行っているが、いつもそうだと思っていることがある。それはドラッカーの語る企業の目的はマーケティングとイノベーション活動による顧客創造であるという言葉と、シュンペーターが語ったイノベーションの本質は新結合という言葉である。

特にここ数年はIT・AIクラウドが進化しており、従来型の事業とIT・AIを結合させて事業を革新する事例、マーケティング活動によって潜在的な「不」を探しIT・AIで解決策を提供する事例が多い。電子書籍出版のメディアドゥ(藤田恭嗣氏)SPEEDAとNewspicsでビジネス界のグーグルを目指すユーザベース(梅田優祐氏)、飲食店特化型求人サービスのクックビズ(藪ノ賢次氏)などが筆者が直接出合った代表例である。

恐らく企業を取り巻く環境変化の中で一番基本的な変化は人口減少に伴う需要減少であろう。企業は新たな顧客を創造するための経営努力を絶えずしなければならない。経営者は厳しい現実を直視し、先頭に立ってマーケティングとイノベーション活動の旗振りをし顧客創造をし続けなければならない。

<執筆>
アタックスグループ主席コンサルタント・丸山弘昭
2020年1月14日フジサンケイビジネスアイ掲載

 

プロフィール

アタックスグループ

顧客企業1700社、スタッフ170人の会計事務所兼総合コンサルティング会社。「社長の最良の相談相手」をモットーに、東京、名古屋、大阪、静岡でサービスを展開している。


Webサイト:アタックスグループ

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