知恵の経営

第110回

愛業至誠の思い、受け継ぐ

アタックスグループ(税理士法人、経営コンサルティング)  執筆

 
 「日本でいちばん大切にしたい会社大賞」の表彰式が21日に開かれた。同大賞は、企業が本当に大切にすべき5人の人たち、(1)従業員とその家族(2)外注先・仕入れ先(3)現在顧客・未来顧客(4)地域住民・地域社会(5)株主・関係機関-に対する使命と責任を果たし、人を大切にする経営に取り組む企業や団体から、特に優良な事例を表彰し、他の模範とすることを目的としている。2011年に創設され今回、第7回を迎えた。

 過去5年以上にわたり、(1)人員整理を目的とした解雇や退職勧奨をしていない(2)外注企業・協力企業など、仕入れ先企業へのコストダウンを強制していない(3)障害者雇用率は法定雇用率以上である(4)黒字経営(経常利益)である(5)重大な労働災害がない-の5条件すべて該当することが応募資格となっている。

 申し込み企業は自薦・他薦含め85件。その中から第1次、第2次の審査を経て17の企業・団体が受賞した。

 経済産業大臣賞はTOTO。トイレ、バスルームなどの水まわり住宅総合機器メーカーとして知られるリーディングカンパニーだ。

 社是は「愛業至誠」。奉仕の精神で顧客の生活文化を向上し、一致協力して社会の発展に貢献する決意を表した言葉で、その後には「良品と均質」「奉仕と信用」「協力と発展」という3つの言葉が続く。初代社長の大倉和親氏が2代目の百木三郎氏に送った書簡にあった次のような言葉が基になった。

 「どうしても親切が第一/奉仕観念をもって仕事をお進めくだされたし/良品の供給、需要家の満足がつかむべき実体です。/この実体を握り得れば利益・報酬として影が映ります。/利益という影を追う人が世も中には多いもので/一生実体を捕まえられずして終わります」
 
 この思いを受け継ぎ、1962年に制定された。衛生陶器でシェア約6割という実績は、この思いが脈々と受け継がれた結果であることは間違いない。

 社員への思いも素晴らしい。家族の海外転勤によるやむを得ない事情や定年退社などを除いた転職による離職割合を示す、正社員の転職的離職率は、2015年度末で0.8%。会社が嫌で仕事を辞める社員はほとんどいない。それだけ社員はやりがい・生きがいを感じている。

 そう感じさせているのは、TOTOの従業員満足に関する考えにある。一般的に従業員満足度は「Employee Satisfaction(ES)」だが、同社グループでは「自立した『個』として社会という舞台で自らが演じる(Play)」という意味を込めて、働くすべての人々の満足を「Player Satisfaction」と定義している。その思いを受け取った社員が社是に基づき高い倫理観をもって、個として活動している同社は、間違いなく今回の受賞に値する企業だった。

<執筆>
アタックス研究員・坂本洋介
2017年3月29日フジサンケイビジネスアイ掲載



 

プロフィール

アタックスグループ

顧客企業1700社、スタッフ170人の会計事務所兼総合コンサルティング会社。「社長の最良の相談相手」をモットーに、東京、名古屋、大阪、静岡でサービスを展開している。


Webサイト:アタックスグループ

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